6月10日渋谷のライブハウス「O-East」にてタイで人気絶頂の歌姫パーミーの日本デビュー・コンサート「Palmy
First Live in Japan - special guest MAF」が開催された。会場はキャパ1000人、タイのポップ・アーティストによる日本初の本格的ライブということで会場が埋まるかと懸念された時期もあったが、蓋を開けてみると熱気ムンムンの満員御礼状態。報道関係者の関心も高く100名以上が集まり、全部で1000人以上入っていただろう。会場を見渡すと、6割強が男性、タイでは女性ファンが多く約7割を占めるのとは正反対だ。日本人とタイ人の比率は、7対3くらいだろうか。最前列に男性がずらりと並び声援を送る姿はまさにアイドルのコンサート(年齢層は高めだけど・・・)。
進行表を見るとコンサートは2部構成で、前座で日本人(DJマー)率いるタイのヒップホップユニットMAFが登場。続いて、大御所パーミーが登場することになっており、両者が共演する場面はないようだ。まずは、MAFがステージに登場。このグループのウリはバービー人形のようにキュートなボーカルのファー(ゴマキ似)。へそ出しルックで挑発的なセクシー・ポーズをキメめられては虜にならない男は居ない。最前列でかぶりつき状態の男性諸君から熱い視線と歓声が絶えなかった。今回のステージでは、ヒット曲「Tur
Wun Nee Meee Num Tah」を含む6曲を披露。最後はタイガーマスクのテーマをフィーチャーしたゴキゲンなナンバー「Pee
Suarh」でキメて第一部は終了。
さて、いよいよ真打パーミーの登場となるのだが、今回はタイから彼女専属のバックバンドも来日した。普通の歌手は、どんなバンドがバックについてもいいようだが、パーミーの場合、彼女自身の存在感があまりにも大きく歌に迫力があり過ぎるため、それに負けないパワフルで質の高いバンドが必要なのだ。パーミー曰く、息がぴったり合っていないと良いノリが出ないので、気心の知れた面子でないとダメらしい。また、バンドメンバーが曲をパーミーに提供していたりして、パーミー・サウンドは彼女とバンドが一体となってはじめて完成すると言えよう。彼らは、いずれも国外へ出るのは今回がはじめての経験でエキサイト気味だということでどんな演奏になるか楽しみだ。
オープニングナンバーは、彼女のデビュー曲で爆発的なヒットとなった「Yahk Raung Dung
Dung」。タイポップスファンならこの曲を知らないものはいないと言える名曲で、キャッチーなサビは、一度聞いただけで、思わず口づさんでしまう程の絶品。タイ本国のコンサートでは、会場が大合唱になり、パーミーと観客とか一体化するナンバーだ。しかし、ここは言葉の壁がある日本。来日前に「日本人はタイ語の意味がわからないから、盛り上がってくれるかしら。」と多少心配していた本人だが、そんな心配は無用であった。演奏が始まり、彼女が登場するやいなや、大歓声が沸き、観客みんなが「チャラララ・・・」と口づさんでいるではないか。それを感知してか、会場にマイクを向けてみるパーミー。すると、みんなが歌ってる!タイ語だ。タイ人女性と思われる高い声が響くが、日本人男性も負けてはいない迫力で歌ってる。驚くとともに気をよくしてノリノリのパーミー。冒頭からいい感じだ。「Peun
Tee Suan Tuk」、「Tun Pen Mai Tuk」とゴキゲンなヒットナンバーが続き、会場は早くも興奮の坩堝と化した。
客のノリがいいのでパーミーもゴキゲン、バンドの演奏もいつになくキマっていてイキイキしてる。それだけでない。音が凄くクリアーで抜群にイイのである。これは会場の音響効果が関係している。タイには、ライブハウスというハコは存在しない。だからレストランや大ハコのディスコなど,本来、ライブ演奏用に設計されてない場所でライブが開催される。当然、音は悪い。大規模なコンサートを開催する会場も、武道館のように音響効果がイマイチのところがほとんどだ。だから、パーミーがきちんとした音響設計のなされたホールでライブを開催するのは今回がはじめてではなかろうか。それだけに、演っている本人達も、自分達が出す音の良さに自ら酔いしれているような感じがする。観客の盛り上がり、パーミーのムード、バンドの演奏、そして音響効果、すべてが最高の状態だ。そしてこれらが相乗効果を成して、かつてない素晴らしいステージになっている。
いいペースでコンサートは進行し、終盤、今回最大のサプライズが訪れた。日本のファンへのとっておきのプレゼントとしてこの曲を歌いますと紹介された、その曲は「宇多田ヒカル」の「SAKURAドロップス」。タイでも人気のあるこの曲を、パーミーは持ち前のダイナミックな歌唱力で見事に歌いこなし、観客を驚かせた。日本語も完璧だ。これには皆、脱帽。盛り上がりはピークに達した。その後、「Bring
Me to Life」、「Zombie」とお得意の洋楽カバーを披露し、いよいよフィナーレへ。
最後の曲は、「Yahk Raung Dung Dung」のりプライズ。が、ここで「一緒に私とステージで踊ってくれるバックダンサーを募集します!」と会場から6人の観客を選んでステージに上げるパーミー。ニクイ演出だ。選ばれた即興ダンサー達と一緒に大ヒット曲を歌うパーミーは、会場にもマイクを向けて観客に歌わせて大はしゃぎ。ステージと観客が一体となって歌う、踊るのお祭り大会でコンサートは終了した。
が当然、このまま終わるはずがない。会場が「アオイーク」のアンコールの声に包まれる。パーミーは」「もう時間も遅いけど、帰らなくてもいいの?」とじらすと「ノー」と切り返す観客。「でもスタッフが終われと指示してるわ。」とさらにじらすパーミー。そして、「出てらっしゃい。」とスタッフをステージに引っ張り出すパーミー。恥ずかしそうに出てきたのはグラミー唯一の日本人社員で今回のタイポップスブームの仕掛け人、高木氏。「みんなこの人が終われと言ってる悪者よ。後でホールで見つけたらタコにしてやって!」とジョークを飛ばす。そして、「そんなに聞きたいんなら、大声で答えてちょうだい。」、「もっと大きく、もっと大きく」と観客を大胆に煽るパーミー。それに大声を出して応える観客。素晴らしい掛け合いだ。そしてアンコールに選ばれたのは、セカンドアルバムからのゴキゲンなナンバー「Tun
Pen Mai Tuk」。
演奏が終わっても、帰ろうとしない観客。さらにもう一曲とアンコールをせがむ。「もう演奏する曲がないわ。」と困ったゼスチャーでおどけるパーミー。バンドメンバーと相談して、じゃあタイらしい歌をと出てきたのがタイ人だったら誰でも知ってるルークトゥン・ナンバー「Sam
Sip Yan Cheu(30歳でもまだ美しい)」。即興演奏だ。パーミーがルークトゥンを歌うなんて、これまでにないこと。これには、会場のタイ人が魂をくすぐられ大喜び。熱狂の渦に包まれてコンサートは終了となった。
全部で21曲、2時間弱のフルステージとなったパーミーの日本デビュー・コンサート。観客動員数、観客のノリ、本人の調子、バンドの演奏、ハコの音響、そして日本の曲を用意するという演出、すべての要素が最高で、誰もが満足できるものとなり、大成功に終わったと言えよう。
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